こんにちは!「医師のキャリア相談所」運営者のbatao(ばたお)です。
これまで、医師の多様な働き方や収入を増やす戦略についてお話ししてきました。その中でも、大きなリターンと同時に大きな挑戦となるのが「独立開業」です。
医師のキャリアには様々な選択肢がありますが、その中でも『開業』は一つの大きなゴールと言えるでしょう。
まずは医師のキャリアパス全体の選択肢を把握した上で、ご自身の適性を見極めることが重要です。
「いつかは自分のクリニックを持ちたい」そう考えている先生も多いのではないでしょうか。
しかし、開業医になるということは、単に優れた臨床医であるだけでなく、「経営者」としての顔を持つことでもあります。
「クリニックを経営するのに、特別な資格は必要なの?」
「経営の知識って、どこまで身につければいいの?」
といった疑問を抱くかもしれません。
今回は、私が人材紹介会社で開業医の先生方と接してきた経験から、クリニック経営に必要な知識や資格の有無、そして成功するための心構えについて詳しく解説していきます。
1. 大きく展開したいなら「経営の勉強」は必須!
もしあなたが、
「複数院展開したい。」
「地域医療を巻き込んだ大規模なクリニックグループにしたい。」
「自由診療をメインに、ビジネスとして大きく成功させたい。」
といった、事業を大きく展開するビジョンを持っているなら、医師としての専門知識とは別に、経営学の体系的な勉強は「必須」と言えるでしょう。
クリニック経営は、単に患者さんを診るだけでなく、以下のような多岐にわたる要素で成り立っています。
戦略立案
どのような医療を提供し、どのような患者層をターゲットにするのか。地域の競合とどう差別化するのか。
マーケティング
クリニックの存在を患者にどう知らせ、集患につなげるのか(Webサイト、SNS、口コミ対策など)。
財務・会計
資金繰り、損益計算、税務対策、設備投資の判断、融資の借り入れと返済計画。
人事・労務
医師、看護師、医療事務などの採用、育成、評価、給与体系、福利厚生、労働法規遵守。
法務・コンプライアンス
医療法、薬機法、個人情報保護法など、医療機関として遵守すべき法律。
IT・システム
電子カルテ導入、オンライン診療システムの活用、データ分析。
これらを体系的に学ぶことで、場当たり的な経営ではなく、論理に基づいた持続可能な経営戦略を立てられるようになります。
将来的に事業拡大を目指すなら、早い段階から経営者としての視点を養うことが不可欠です。
2. 小規模で経営する場合でも「最低限の勉強」は必要不可欠
「私は、地域密着型で、小さなクリニックを細々とやっていければ十分」と考えている先生もいるかもしれません。
しかし、たとえ小規模なクリニック経営であっても、最低限の経営知識は必要不可欠です。
なぜなら、クリニックは「医療を提供する場」であると同時に「事業体」だからです。
赤字が続けば、いくら良い医療を提供していても閉院せざるを得なくなります。
資金繰り
毎月の家賃、人件費、材料費、光熱費など、固定費・変動費の把握と、それに見合う収入の確保。
レセプト請求
診療報酬の仕組みを理解し、正確にレセプトを作成・請求する知識。
集患対策
地域住民にクリニックを知ってもらい、来院してもらうための基本的な方法。
スタッフ管理
数名のスタッフであっても、採用、シフト管理、教育、トラブル対応など、人に関する基本的な知識。
これらを全く知らずに開業してしまうと、想像以上に経営が立ち行かなくなるリスクが高いです。
独学でも構わないので、開業に関する書籍を読んだり、開業セミナーに参加したりして、基本的な知識は必ず身につけておきましょう。
3. 経営に役立つ「資格」の例:直接的ではないが知見を深める選択肢
クリニック経営に必須の「国家資格」は、医師免許以外にありません。
しかし、直接的に「経営者」という資格があるわけではないものの、経営に関する知見を深め、自身のスキルを証明する上で役立つ資格やスキルはいくつか存在します。
MBA(経営学修士)
最も包括的に経営学を学べる学位です。戦略、マーケティング、ファイナンス、組織論など、ビジネスの根幹を体系的に学べます。
特に事業規模を大きくしたい先生や、将来的に医療以外の分野での活躍も視野に入れている先生には非常に有用です。
通学だけでなく、働きながら学べるプログラムやオンラインMBAも増えています。
中小企業診断士
中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う専門家資格です。
経営全般に関する幅広い知識を習得できます。
医療機関も「中小企業」に分類されるため、クリニック経営の実務に直結する知識が多く含まれます。
FP(ファイナンシャルプランナー)
個人の資産運用やライフプランに関する知識を習得できます。
直接的にクリニック経営の売上を上げるスキルではありませんが、自身の資産管理や、事業承継、M&Aなどの長期的な視点で役立つことがあります。
簿記(日商簿記など)
会計の基本を学ぶための資格です。
財務諸表を読み解く力は、クリニックの経営状態を把握し、適切な経営判断を下す上で極めて重要です。
数字に強くなる第一歩としておすすめです。
これらの資格取得は必須ではありませんが、経営への本気度を示す指標にもなります。
そして、何よりも自身の視野を広げ、判断力を高める上で大きな助けとなるでしょう。
4. 診療に専念したいなら「経営知識のあるスタッフ」を採用するのも手
「やっぱり自分は臨床に集中したい!」「経営は苦手だから、できるだけ任せたい!」と考える先生もいらっしゃるでしょう。
その場合、経営知識やマネジメント経験のあるスタッフを採用するというのも、賢い選択肢の一つです。
事務長や経営コンサルタント
クリニックの事務長として、経理、労務、集患、広報などを統括できる人材を雇うことで、先生は診療に専念できます。
また、開業当初は医療機関専門の経営コンサルタントに依頼し、軌道に乗るまでのサポートを受けるのも有効です。
経験豊富な医療事務スタッフ
レセプト業務に精通し、患者対応や会計処理をスムーズに行えるベテランの医療事務スタッフは、日々の運営を支える上で非常に重要です。
外部サービス活用
税理士、社会保険労務士、弁護士など、専門家へのアウトソーシングを積極的に活用しましょう。
餅は餅屋、という言葉の通り、専門家に任せることで、ミスを防ぎ、効率的な経営が可能です。
ただし、これらのスタッフの雇用やサービスの導入にもコストがかかります。
また、最終的な経営判断と責任は院長であるあなたにあります。
完全に丸投げするのではなく、最低限の経営知識を持って、彼らと対等に議論できるレベルにはなっておくべきでしょう。
優秀な人材を雇うためにも、あなた自身が明確なビジョンを持ち、それを共有できるかどうかも重要です。
優秀なスタッフを惹きつけるためには、採用する側としての視点も不可欠です。noteでは『優秀な医師が思わず応募したくなる求人票の作り方』を解説していますが、これはスタッフ採用にも通じる重要な考え方です。

まとめ:開業医は「医療」と「経営」の二刀流
今回は、クリニック開業における経営知識や資格の必要性について解説しました。
開業医は、患者さんの命と健康を守る「医療のプロ」です。
それと同時に、スタッフを守り、地域に貢献する「経営のプロ」でもあります。
大きく展開したいなら経営の体系的な勉強は必須、小規模でも最低限の知識は必要です。資格取得は必須ではないものの、自身の知見を深める上では有効な選択肢となります。
そして、すべてを一人で抱え込まず、経営知識のあるスタッフの採用や外部サービスを賢く活用することも、成功への重要な戦略です。
「医療」と「経営」の二刀流を目指すことで、あなたはきっと、地域に根差した、そして持続可能な素晴らしいクリニックを築けるはずです。
この情報が、あなたの開業の夢を実現するための一助となれば幸いです。
batao(ばたお)
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